最近の千里が可愛くなってきている件 〜新ジャンル「きっちり出来ない娘」〜

「正義の粘着質」「委員長より委員長っぽいヤツ」「猟奇的な彼女」「恐怖のきっちり女」「きっちり中分け美人」等等、様々な形容をされる几帳面・粘着質少女こと木津千里。最初は単なる神経質なキャラでしたが、その使い勝手の良さから、彼女は原作者に可愛がられるようになります。千里はきっちりの名の下、あらゆる話題に絡み、徐々にその頭角を現し始めました。ついには正ヒロインであるはずの可符香を追い越すほど頻繁に登場するキャラへと成長します。


 し か し 人 気 が 無 か っ た 。



何故あれほど毎回のように出ておきながら人気が無いのか。皮肉にもその原因は彼女の使い勝手の良さである”きっちり”に原因がありました。絶望先生の黄金展開パターンとして、千里が先生に絡んでくる → きっちりさせたい! → きっちり出来ない!イライラする! → 無理矢理デモ、キッチリトサセルノデス!! という流れがあります。そう、きっちりは彼女の暴走のスイッチでした。そして彼女の過剰なキレ振りと猟奇化に読者の一部は嫌悪感を抱くようになります。きっちりは諸刃の剣だったのです。


あれあれ、しかし「かってに改蔵」の名取羽美は同じようなキャラでもわりかし人気があったのでは??なぜ千里ばかりが?


そう、名取羽美と木津千里の間には大きな違いがありました。それは「キレ方の積極性」です。
羽美は(あくまで本人的には)普通に行動し、普通に日常生活を送ろうとしていたのに失敗したり迷惑をかけたりして周りから避けられるようになり、その鬱憤が貯まってとうとうプッツンしてしまう感じ。スイッチの入り方がかなり受け身です。
対して千里はかなりアグレッシブ。自らガンガン周りに絡んで世の中の歪みを積極的に正そうとしていきます。みんなの迷惑お構いなし。どんどん自分からスイッチを入れます。これが彼女の嫌がられる最大の原因でした。




しかし、やがてそんな彼女に転機が訪れます。


きっかけは第四十二話「シミと毒出し」でした。温泉でデトックスされた千里は毒が抜けて朗らかで大雑把なキャラとなってしまいました。


毒が抜けて中分けしていない千里(左端)

毒の抜けた千里の様子は単行本第五集のおまけページでも見ることが出来ます。

また第四十七話「夢無し芳一の話」では絶望先生の夢の中の話が展開。先生の夢の中には全然きっちりしていない、だらしない千里が登場します。以前、七夕の回で短冊に人生設計を書くくらい自分の人生にもきっちを追求していたはずの千里が「どうでもいいよ人生」などと言い出してしまいます。*1


だるだるの千里

普段、一分の隙も見せず、背後から近づいたって逆にこっちが殺られるのではないかと思わせるたたずまいの千里からは想像ができません。この状態なら真正面から近づいてほっぺた突っついても「なぁーにぃー・・・?」なんて、ジトッとした目で見られて終わりそうです。ヤバイ。千里ヤバイ。

これらの描写にファンは過剰反応。
「アンニュイな千里モエス」「乱れた髪が艶っぽい」
などと高評価でした。古典的ではありますが、「ギャップに萌える」というヤツですね。今も昔も、完璧な人間が崩れていく様は性の別を問わずそそります。

この反応を久米田先生は知ってか知らずか、以後、千里の暴走はそれまでほどのヒートアップを見せなくなっていきました。


そして先日、謎の全身カットがマガジンに載りました。


三角定規を持って座る千里

これ、私が最初に読んだときは完全に見落としておりました。他の人たちが触れているのを見てやっと気がついたのですが、気付いた後もチンプンカンプン。なぜ千里は三角定規を持って座っているのか?数学の時間?いや違います。*2ちなみにこのとき2年へ組では風邪が流行しており、千里も風邪(しかもかなり辛そうな状態)でした。風邪と何か関係があるのか?


そのとき、ある読者がこんなことを言い始めました。

「こいつ、きっちり座ろうとしてるんじゃ?」







な?!











重い風邪でマスクをして、はがれかけの熱さま○ートを額に貼り、髪がほつれて涙目になりながらも必死にきっちりとした姿勢を保とうとする中分けロング女。







      ちょ








     キ  タ










 キ タ よ コ レ 。








ヤバイ。千里ヤバイ。

この娘はなんですか。風邪でフラフラになって休みゃいいだろうに「きっちり出席」して、しかもまっすぐ座れない状態なのに「きっちり座ろう」としますか。でもねっ!でもねっ!きっちり出来てないよ!必死に頑張ってるけどきっちり出来てないよ!三角定規まで使って!きっちり90°の垂直に姿勢を保とうとしてるけど傾いちゃってるの!
この後千里は「待ちなさいよ!」と言いながら重い風邪をおしていつもどおり絶望先生を追いかけて街へ向かっていました。そして体の傾きを増しつつ、ついに限界を迎えたのか、いつの間にかコマから消えていました。倒れたのか、千里?


この辺で既に「千里は俺の嫁」と言い出し始めたクレイジーな諸兄もいらっしゃることでしょうが、まあ落ち着け。ダメ押しをしておきます。


単行本第六集のおまけページで「思春期にナディアを見た男はトーンを貼った女の子に通常の2倍の好感度を抱く」という久米田先生の自由研究が発表されていました。(サンプル:マガジン担当編集・竹田哲也氏)


それを聞いた千里の反応



好感度に目が眩み、きっちりを忘れる千里


あれれ〜、目暮警部。このお姉さん、きっちりトーンを貼れてないよ?w


藤吉さんにまで「らしくないなぁ…」とツッコまれる千里。
以前私は、千里が自分のド貧乳コンプレックスに関してはきっちりできなくなるということを指摘しましたが、なんかエスカレートしています。もっと唯我独尊っぽい奴かと思ったのに、自分がみんなから避けられていることを結構気にしていたようです。なんだこれ。新手のドジッ娘か?!まさかあの千里にドジッ娘属性が付加される日がやって来ようとは……。



2006年はツンデレから派生して様々な萌え属性の開拓に心血が注がれた1年でした。
新しい年・2007年を迎えた今、私はここに新たな属性を宣言しようと思います。



新ジャンル「きっちり出来ない娘」


千里、始まったな。


(参考:「完璧超人・千里の苦手なもの」

*1:ちなみに四十二話・四十七話の千里のセリフは句読点が消えています。

*2:国語教師である絶望先生が何故か数学を教えていたことが一度ありましたが。